死にたがりな君と、恋をはじめる
日常を変える勇気
和解
『おはよ~奈月。よく眠れた?』
「……うぅ……」
もはや毎朝の恒例行事となった、レイの声による目覚めに低い声で呻いた。
目をこすりながら上半身を起こし、薄く開けて時計に目を凝らす。
今……何時……?
霞のかかる目によると、今の時刻はいつも起きている時間より二時間以上も早かった。
いや……レイさん。
「早く起こしてとは言ったけどさ……早すぎないですか……?」
かすれる声でそう文句を言うと、レイはえーっと不満そうにため息をついた。
「行きたいとこあるからって、早く起こしてーって言ってきたのは奈月でしょ?」
「そ、れは……そうだけどですね……」
寝起きは本当に頭が回らなくて、それでも私はなおも反論しようとする。
「早く起こせとは言いましても、限度があるでしょうよ……」
とは言っても、ぐちぐち言っていても仕方がないので、仕方なくベッドから降りた。
寝ぼけ眼のままタンスに近寄り、制服に腕を通した。
そして、一階に降りると、誠おばさんが何やら料理をしていた。
え……誠おばさんって毎日こんなに早い時間に起きてるの……?
驚きで固まっていると、誠おばさんがこちらに目を向ける。
それからその目がこぼれそうになるほど大きく見開かれた。
「え……え⁉ 奈月ちゃん⁉」
びっくりしたように叫んだおばあさんは次の瞬間眉をひそめた。
「え……本物? いや……つややかな黒髪に、大きくて澄んだ瞳と透き通るほど白い肌……。どう見ても本物……か?」
「あっ……うん。本物だよ? 誠おばさん」
顎に手を当て、ぶつぶつと呟いて思案する誠おばさんに苦笑して、少し首を傾げた。