願わくば,彼女が幸せになれますように。
春を感じさせる日差しが彼女の髪をキラキラと照らす。
午後,3時くらいのこと。
卓球部のくせに縄跳びを飛ぶ先輩の姿を遠目に見る。
「なんで体力作りが縄跳びなのよ…。」
「それなー!」
愚痴をこぼす私に同意してくれる彼女。
私は疲れてその場に座り込んだ。
「あーあ,彼氏出来ないかなぁ!」
「何?好きな人でもいるの?」
からかいの音を混ぜ込んだ,興味津々の瞳が私を真っ直ぐに見据える。
私は居心地が悪くなって,彼女から視線を外す。
2匹の小鳥達さえも,恋人のように見えた。
「どーせ,私は恋もしたことありませんよぉー!!」
不貞腐れるようにそっぽを向くと,案の定,すごくびっくりされる。
「嘘!恋したことないの!?」
「そーゆー柚姫(ゆずき)はどうなのよ!」
反論を口にすると,彼女はニヤリと笑って,
「彼氏,3人いたことあるし〜!」
と,得意げに自慢してきた。
私はムウっ,とほっぺを膨らませるが,悔しさと不貞腐れる感情はすぐに青空へ吸い込まれてしまった。
……気になる。
「ねぇねぇ!恋バナしてよ!」
私が子供のように頼むと,これまたニヤリと笑って,
「じゃあ1番ドラマチックなの話してあげる」
そう言った。
彼女は青空を見上げながら息をするように話し出した。