願わくば,彼女が幸せになれますように。

「それが,私の3回目の恋。」

あはは,と笑う彼女はなんだか痛々しげだった。

私が黙っているのを見て,

「そんな顔しないでよー!
私が可哀想な子じゃん。」

と,怒ったように,でもちょこっとだけ悲しげに言った。

「もう未練はないの?」

うーん……と唸ったあと,彼女は青空に負けないくらいの笑顔で

「もう無い!」

と言った。

その瞳に一瞬影が見えたのは気のせいだろうか。

彼女の話によると,その海斗って人は中学校で浮気をしたという噂が流れてしまい,孤立してしまったとか。

「本当に,神様からバチが当たったんだよ!
ざまあみろって感じ〜
中学も離れたし,清々した!!」

私が

「そっかぁー。」

と言って微笑むと,彼女も微笑み返してくれた。

「もう恋はしないの?」

「うん!もうお腹いっぱいー!」

彼女はそうおどけてみせると,

「あ!集合かかってる!早く行こー!」

と,走り出してしまった。

私は彼女の背中を見て,ほんの少しだけ辛くなった。

彼女の話を聞いても,まだ恋って何かわからない。

むしろ,恋しない方がいいんじゃないかと思う自分がいる。

でも,きっと彼女にとってその恋は無駄じゃなかったはずだ。

彼女自身,浮気された辛さを知ってるから,もし新しい恋人が出来ても浮気なんて絶対しないだろう。

相手を思いやることが彼女なら出来るはずだ。

私は暗くなりつつある青空に顔を向ける。

そして思った。

願わくば,彼女に新たな幸せが舞い降りますように,と。

私は彼女のたくましい背中を追いかけて行った。
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