水性恋愛
秒殺魔
「ずっと前から好きでした!
 俺と付き合って下さい!」

男子に頭を下げられるのは
これで何度目だったかな…。

「…ごめんなさい。
 今そういう気無いです。」

そう言って私は立ち去る。

岡崎 陽菜(オカザキ ヒナ)。
現役高校2年生の17歳。

夢にまで見た高校生活。
今日で何日が経つんだろう。

スタスタと長い赤廊下を歩く。

中学3年生の卒業式。

4月から高校生デビューして
沢山友達つくって色んなお店行って
中学とは一味違う学校生活を満喫したい。

…そう思ってたのに。
なのに!

「あっ…見ろよ!秒殺魔!」

「うわホント!しかも何か怒ってない?
 また誰か振ったんだろうね。」

「でもやっぱこの学校じゃ一番
 美人だよね~。」

「なんか見た目クールだしカッコイイし。
 ほかの子とワンランク違う!
 さっすが秒殺魔ってカンジ!」

見ての通り。

廊下を通るだけで影でヒソヒソ言われ。
私の行為1つひとつにグチグチ言われ。

高校2年目の今でも友達と呼べる
存在なんてどこにもいないのです。

しかも通称「秒殺魔」…。

昔からの顔やスタイルについての
好評はヤバイくらい凄かった。
告白も結構されていた。

高校に入学しても告白されることは
無くならないし
恋愛未経験の私はそれを全部却下。
そのせいかいつの間にか秒殺魔とか
変な名称を付けられ…。

こんなの私が望んだ高校生活じゃない!

今の昼休みという時間に限らず
空いてる時間は出来るだけ
1人でいるようにしてる。

通る度に何か言われるのは嫌!
それに1人でいれば何かと楽!

「よいっしょ…!」

大きい音を上げないように
立ち入り禁止と記されている
屋上のドアを開ける。

ココが私の秘密の場所。
普段立ち入ることが許されない
この場所なら誰も来ない。
だから思い切りストレスを発散出来る。
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