イジメ返し―連鎖する復讐―
指の顔を向きたい衝動に駆られれて爪を立てて指の皮をむく。
混乱し動揺している自分の気持ちをなんとか落ち着けようとその行為を繰り返す。
指先に真っ赤な血がじんわりと滲み始める。
止められない。
こうしていないと、あたしはもう生きていけない――。
「――咲綾先輩?」
突然、声をかけられた。
人がすぐそばまでやってきていることにすら気が付かなかった。
「咲綾先輩、ですよね?」
「エマ……」
「体育館、誰かいるんですか?」
首を傾げながらエマがゆっくりとした動作で体育館を覗き込む。
その数秒後、すべてを理解したのかエマがそっとあたしの手を掴んだ。
「ちょっと、場所変えましょう」
そう言ってエマはあたしの手を取ったままゆっくりと歩き出した。