イジメ返し―連鎖する復讐―
SNSはあたしにとってもはや生活の一部といってもいい。

本アカは高校でできた仲の良い友達にしか教えておらずフォロワーも多くはない。

あえてオープンにしないのは、中学の時にあたしをイジメた人間に知られたくないからだ。

奴らにバレてしまえば『高校デビューのくせに』『キモっ』と悪口を書かれ荒される可能性がある。

だから、あたしは裏アカを作った。

その裏アカは高校の友達にも教えていない。

名前は『姫』。

バズりそうな動画や写真を手当たり次第にアップした。

もちろん、個人を特定されないものばかりだ。

このアカウントの情報を見て『姫』があたしだなんて特定できる人間はいないだろう。

アイコンも拾い画を加工して作った。

いけないことだと分かっていても手ごたえがあるからやめられない。

本アカではほとんどこない通知が、何か呟けばじゃんじゃんくるしDMだって返信することが難しいぐらいくる。

あたしのことを誰も知らないSNSの世界は妙に気持ちを落ち着かせてくれた。

自分じゃない自分になったみたいな気分。

「フォロワーすくなっ。つまんねぇのアップしてるからじゃん」

中学の時にあたしをイジメていた人間のSNSを毎日のようにチェックする。

「スクールカーストトップだったのに、フォロワーが2桁とかマジで笑えるんだけど。しょぼすぎ」

アイツらが今のあたしの裏アカのフォロワー数を知ったらひっくり返ることだろう。

ざまあみろ。あたしはもうアンタたちにイジメられていた頃のあたしじゃない。

フォロワーの数が増えれば増えるほど、あたしの自己顕示欲は満たされ、カラカラに乾いてしまった心の中が潤っていくみたいだった。
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