イジメ返し―連鎖する復讐―
不穏な空気
「――しばらく休んでごめんねっ。これからまた一緒に頑張ろうねぇ!」
翌日、2か月部活を休んでいた早乙女瑠偉が復帰した。
膝の調子が悪く、大事をとって休養していたと瑠偉は話した。
3年生だけでなく、2年も1年も瑠偉の復帰を喜んだ。
そして、何より顧問の折原先生が一番嬉しそうだった。
「瑠偉が戻ってきてくれて本当によかった。無理せず頑張るんだぞ」
「センセ、ありがと」
ふにゃっとした可愛らしい笑みを浮かべた瑠偉に折原先生がだらしない笑みで返す。
それどころか、瑠偉の肩をポンポンッと馴れ馴れしそうに叩いていた。
「それと、大事な話がもう一つ。来週、隣町の桜南高校と練習試合を組めることになった」
先生は瑠偉の肩に手を置いたまま誇らしげに言った。
「えぇ!?」
「桜南??」
桜南高校の名前が出た瞬間、部員がざわつく。
桜南高校はバスケの名門校だ。練習試合を多数の学校から申し込まれているため、組んでもらえる可能性の方が低い。
今まで何度頼んでも断られ続けていたのに。
「桜南ってヤバい!強豪校じゃん!!」
ノエルが驚きに声を上げる。
「必死に頼み込んで実現することができたんだ。こんなチャンス滅多にないぞ!みんな、気を引き締めて練習するように」
「……はい!!」
俄然やる気になった部員たちにあたしは心の中でガッツポーズした。
桜南との練習試合ももちろん楽しみだけど、みんなの士気があがったことが何よりうれしかった。
もっとみんなで高みを目指したい。あと、3か月……。悔いのないバスケット人生を送りたい。
この時のあたしは悠長にそんなことを思っていた。