イジメ返し―連鎖する復讐―
「終わった……終わった……終わった……」

通知の鳴りやまないスマホを床に叩きつけるとあたしは立ち上がった。

またリセットしたい。すべてをリセットする。

そのためにはここにいてはいけない。

また逃げるんだ。

あたしのことを誰も知らない場所へ行かなくちゃ。

早く。早く。早く。早く。早く。

頭の中で声がする。

『え……?アイツ、なんていう名前だっけ?』

『長田じゃね?』

『違うよぉ、長島さんだって』

『影薄すぎて名前わかんねぇよ』

『しっ、聞こえるよ。可哀想じゃん。確かにいてもいなくてもいい人間だけどさぁ』

頭の中の声が大きくなる。

やめてよ。もうやめて。

「――もうやめて」

窓ガラスを開けて窓枠に立って両手を広げる。

逃げよう。今すぐにここから。新しい場所へ逃げるんだ。

ふわりと体が宙に舞う。

あっという間に体は地面に叩きつけられた。

物凄い衝撃に体を動かすことはできない。

目をつぶると、走馬灯が蘇る。

よかった。これであたしはまた新しい場所でリセットするんだ。

人生をやり直すんだ。

そう誓うと、あたしはそのまま意識を手放した。
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