イジメ返し―連鎖する復讐―
「瑠偉が俺を裏切っていた……?そんな……まさか……」
狼狽えて髪の毛をかきむしる。
手元のスマホには今もひっきりなしに電話やメッセージが届き続ける。
俺にはもう何もない。全て失った。
これからどうしたらいいんだ。
どこへ行ったらいい……――。
ベンチで頭を垂れてうな垂れていると、ポンポンッと肩を叩かれた。
顔を持ち上げると、見覚えのない中年男が視界に飛び込んできた。
「折原一郎さんでよろしいでしょうか?」
「……だったらなんだ」
「私、こういうものです。折原さんに一度お話を伺いしたいのですがよろしいでしょうか?」
男が差し出してきたのは名刺だった。
「週刊誌……?」
男が所属していたのはゴシップを専門とする週刊誌の出版社だった。
「弱小女子バスケ部を全国大会に導いた指導者が教え子に手を出しているらしいという情報がリークされましてね。写真も動画も預かっています。先生に事実確認をとりたいのですが」
「なっ!!」
「他の出版社にも同じ情報がリークされているんです。なので、ぜひうちで一番最初に取材を――」
「ふざけるな!!そんなもの受けないぞ!!」
ベンチから立ち上がり駆け出そうとした瞬間、公園に見知らぬ男女が入ってきた。
二人は顔を見合せると俺を指さしこちらへ駆けてくる。
アイツらもマスコミか……!!
「あっ、折原さん!!」
俺は駆け出した。
全速力で走り続けると、マスコミの連中を巻くことに成功した。
もしこれ以上追いかけてくるようなら警察に……。
そこまで考えてハッとする。
俺は警察に助けを求めることもできない。求めれば最後、俺のしてきたことがあかるみになってしまう。
問題は八方ふさがりだった。もうどうすることもできない。
おぼつかない足取りでよろよろと当てもなくしばらく歩いた。
ふと気が付くと、俺は長い橋の上にいた。
車の通行量がかなり多い幅の広い橋だった。
欄干にもたれかかりながら取り出したスマホを川に向かって放り投げた。
数秒後、スマホは吸い込まれるように川に落ち沈んでいった。
もう俺の人生は終わりだ。
欄干から身を乗り出すようにして川を覗き込む。
目をつぶると、瞼に浮かんだのは幸美ではなく瑠偉の顔だった。
「センセ」
可愛い瑠偉の声が脳裏に蘇ると同時に怒りが込み上げてきた。
『センセ、奥さんと離婚して瑠偉だけのものになってよ』
『瑠偉しか見ちゃダメ』
あんなことを言っていながら俺を裏切っていたなんて。
プライドはもうズタズタだった。
俺は欄干に手をかけた。死ぬことは怖くなかった。
「瑠偉……俺はお前を殺してやりたいぐらい憎いよ」
可愛さ余って憎さ百倍。
俺はグッと腕に力を込めて、欄干に足をかけた。
水面を渡ってきた風は吐き気がするほど生臭かった。
狼狽えて髪の毛をかきむしる。
手元のスマホには今もひっきりなしに電話やメッセージが届き続ける。
俺にはもう何もない。全て失った。
これからどうしたらいいんだ。
どこへ行ったらいい……――。
ベンチで頭を垂れてうな垂れていると、ポンポンッと肩を叩かれた。
顔を持ち上げると、見覚えのない中年男が視界に飛び込んできた。
「折原一郎さんでよろしいでしょうか?」
「……だったらなんだ」
「私、こういうものです。折原さんに一度お話を伺いしたいのですがよろしいでしょうか?」
男が差し出してきたのは名刺だった。
「週刊誌……?」
男が所属していたのはゴシップを専門とする週刊誌の出版社だった。
「弱小女子バスケ部を全国大会に導いた指導者が教え子に手を出しているらしいという情報がリークされましてね。写真も動画も預かっています。先生に事実確認をとりたいのですが」
「なっ!!」
「他の出版社にも同じ情報がリークされているんです。なので、ぜひうちで一番最初に取材を――」
「ふざけるな!!そんなもの受けないぞ!!」
ベンチから立ち上がり駆け出そうとした瞬間、公園に見知らぬ男女が入ってきた。
二人は顔を見合せると俺を指さしこちらへ駆けてくる。
アイツらもマスコミか……!!
「あっ、折原さん!!」
俺は駆け出した。
全速力で走り続けると、マスコミの連中を巻くことに成功した。
もしこれ以上追いかけてくるようなら警察に……。
そこまで考えてハッとする。
俺は警察に助けを求めることもできない。求めれば最後、俺のしてきたことがあかるみになってしまう。
問題は八方ふさがりだった。もうどうすることもできない。
おぼつかない足取りでよろよろと当てもなくしばらく歩いた。
ふと気が付くと、俺は長い橋の上にいた。
車の通行量がかなり多い幅の広い橋だった。
欄干にもたれかかりながら取り出したスマホを川に向かって放り投げた。
数秒後、スマホは吸い込まれるように川に落ち沈んでいった。
もう俺の人生は終わりだ。
欄干から身を乗り出すようにして川を覗き込む。
目をつぶると、瞼に浮かんだのは幸美ではなく瑠偉の顔だった。
「センセ」
可愛い瑠偉の声が脳裏に蘇ると同時に怒りが込み上げてきた。
『センセ、奥さんと離婚して瑠偉だけのものになってよ』
『瑠偉しか見ちゃダメ』
あんなことを言っていながら俺を裏切っていたなんて。
プライドはもうズタズタだった。
俺は欄干に手をかけた。死ぬことは怖くなかった。
「瑠偉……俺はお前を殺してやりたいぐらい憎いよ」
可愛さ余って憎さ百倍。
俺はグッと腕に力を込めて、欄干に足をかけた。
水面を渡ってきた風は吐き気がするほど生臭かった。