イジメ返し―連鎖する復讐―
「……は?今日も練習来ないってどういうこと?」
休み時間になり隣のクラスのノエルを廊下に呼び出して練習を休むことを伝えると、ノエルは不満げに眉間に皺を寄せた。
「今日は用事があるの。ごめんねぇ。明日からはちゃんと練習に参加するから許してぇ?」
「折原先生がいなくなってから気持ち緩みすぎじゃない?引退試合も近いのに……。このままじゃ結果出せないよ」
「だから、ごめんってばぁ。ていうか、ノエルどうしちゃったの?この間まではやる気なかったのにぃ」
できるだけ穏やかな口調で言うも内心苛立っていた。
「実はさ、父親が引退試合で県大会まで進んでそれなりに結果出せたら就職じゃなくて大学進学も考えてやるって言いだして。あたし、このままじゃ卒業後は働かなくちゃいけない感じでさ」
「でも、ノエルのお父さんって外科医でお金持ちだよねぇ?お金がないわけじゃないのになんで就職しなきゃいけないの?」
「うちにも色々あんの。ねっ、だからお願い。瑠偉が頑張ってくんないと絶対勝てないしキツイの」
「わかったぁ。じゃあ、明日から行くよ」
「うん。頼むね」
「了解でーす」
ノエルにはああいってみたものの、正直もうバスケなんてどうだってよかった。
あたしの身長ではこれ以上努力しても結果が伴うことはないだろう。
周りの人間よりそれなりにうまいプレーができたとしても、プロレベルに到達しているわけでもない。
折原がいたからそれなりに楽しく部活に参加していたけど、先生がいない今バスケ部に行くのはめんどくさい。
「今日のデート楽しみだなぁ」
ノエルに背中を向けて教室に戻る。頭の中にあるのは照くんとのデートのことだけだった。