イジメ返し―連鎖する復讐―
「ちょっとつめて!」

照くんの隣に座りあたしを睨み付ける唯。

ああ、めんどくさいことになった。

折角の誕生日が全部台無しなんだけど。

「唯がなんでここにいるわけぇ?」

「なんで、ってそれこっちのセリフなんだけど。アンタ達いつから浮気してたの?」

必死に声を押し殺して怒りに耐えているように見えたけれど、鼻の穴がひくひくと震えていた。

ブサイクな顔がさらにブサイクになってるんですけど。

それが可笑しくて思わずプッと吹き出す。

「なっ……!アンタ今笑った!?自分がどういう状況か分かってんの!?アンタのこと友達だと思ってたのに……。今日だって……瑠偉が誕生日だから朝から色々準備して喜んでもらおうって計画して……。それなのにアンタはあたしを裏切ってたんだね!!」

「ごめん、唯。ホントごめん……。俺、出来心で……」

「照は黙っててよ!!」

涙をボロボロと流しながら泣く唯の背中を必死にさすりながら励ます照くんにも嫌気が差してくる。

なに、この茶番。あたし、こんなの見てる程暇じゃない。

「てか、瑠偉もう帰ってもいい?髪の毛濡れちゃったし風邪ひいちゃう」

そう言うと、唯が「ふざけんな!!」と叫んであたしの頬を叩いた。

パシンッという乾いた音が店内に響き渡る。

「この泥棒猫!!」

「……いったぁ。あのね、言わせてもらうけど『瑠偉ちゃん可愛い。大好き』とかいって言い寄ってきたのは照くんだから。瑠偉じゃないし」

「それがなに!?」

「彼氏とられたくないんだったら、もっと努力すれば?瑠偉より可愛くなれば照くんも浮気しないかもよ」

「アンタね―ー」

「あとね、瑠偉は誕生日をお祝いしてなんて頼んだ覚えないからね。サプライズもほんと寒かったし、飾りつけの配色もマジで無理だった。唯ってホントにセンスないよねぇ。あっ、男の趣味も悪いね。なんか照くんがキモく見えてきちゃったぁ」

あたしはバッグにテーブルの上のスマホを押し込んで席を立った。

「唯は照くんで満足できてたの?キスの仕方もへたくそだったんだよねぇ。唇なめ回すキスの仕方がほんと無理」

自分の口から次から次に唯を傷付ける言葉が飛び出す。

心底自分でも性格が悪いなと思う。

チラリと隣の席の咲綾とエマに視線を向けた。

二人はあたし達のやりとりを楽しそうに見つめていた。
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