イジメ返し―連鎖する復讐―
雑貨屋でプレゼントを買った後、あたし達は近くの公園のベンチで休憩することにした。
「これ飲んで?」
「ありがとう。一花ちゃん喜んでくれるといいね」
自販機で買ってきたミルクティーをあたしに渡すと、祐ちゃんは隣に座った。
あたしの好みをちゃんと知ってくれているのは祐ちゃんだけだ。
「ノエル……部活は大丈夫?」
「あっ……、うん」
折原先生が瑠偉の家で瑠偉と瑠偉のおばあちゃんを殺すなんて考えてもみなかった。
事件はマスコミの手によってセンセーショナルに報道され、バスケ部は呪われていると生徒たちは大騒ぎだった。
まさか先生が瑠偉を……。深い関係にあるとは思っていたけどこんなことになるなんて……。
「ちょっと聞きにくいんだけど、部内でイジメがあったっていうのは本当なの?」
「え?なにそれ……」
「うちの学校でそんなこと言ってる奴がいてさ」
「そんなのあるわけないじゃん」
「だよね。そんなことが起こってたら部長のノエルがすぐに気付いてあげるはずだしね」
祐ちゃんの言葉がチクリと胸に刺さる。
部内にイジメはあった。いや、むしろ先導していたのはあたしだ。
あたしにとって咲綾は目の上のたんこぶだった。
誰よりも一生懸命で前向きでバスケに対する情熱を持っていた咲綾。
部長は引退試合のあと、先輩たちが指名するのが恒例だった。
先輩たちに気に入られていたあたしが部長に選ばれたけど、後輩たちの一部には咲綾を部長にしたほうがいいという不満を口にしていた人間もいたと噂で聞いた。
そう思われていたことが悔しかったし、咲綾の存在が憎らしかった。
でも、ずっと我慢してきた。
部長であるあたしが部内の人間関係もうまく保っていく義務があると思っていたから。
それなのに……。
咲綾が口を出してきた。
あたしだって頑張っているのに。それなのにあたしの気を知らずに……。
――部活から追い出してやる。
スイッチが入ったらもう後戻りはできなかった。
咲綾を痛めつけている時、あたしは全てから解放されたような気持ちになった。