イジメ返し―連鎖する復讐―
「さっきの動画……ノエルだよね?あの子……咲綾ちゃんのことどうして叩いたり蹴ったり……なんで?どうしてあんな酷いことを……」

祐ちゃんの目は真っ赤になって潤んでいる。

あたしは慌てて「違う!!」と否定をした。

「なにが違うの?ノエルたちは咲綾ちゃんを囲んであんなふうに傷付けた……。ノエルは咲綾ちゃんをイジメてた。そうでしょ?」

「それは……」

あんな動画見せられたら否定することはできない。

だったら――。

「祐ちゃん、違う。確かにあたしは咲綾を叩いたり蹴ったり……イジメっぽいこともした。だけどそれには理由があるの」

「イジメの理由……?」

「そう。あたし、バスケ部の部長でしょ?あたしだって必死だったんだよ?それなのに咲綾がいちいち口出してきてそれで……。咲綾にだって悪いところあるの。だからーー」

「イジメられる方にも悪いところ……、つまり原因があるって言いたいんだね?」

「そうだよ!だから――」

言いかけてハッとする。

さっき祐ちゃんが菅田に頭を叩かれていたことを思い出した。

「――ノエル、聞いて。僕も菅田やバスケ部の奴からイジメられてるんだ。高1のときから今まで」

「え?」

「暴力、無視、悪口、物を隠される、嫌がらせをされる、仲間外れ、下着一枚にされて写真を撮られたり……さっきノエルがしてたみたいに倉庫で叩かれたりもした」

「祐ちゃん……」

「僕は……ノエルの気持ちが分からないし、いじめっ子の気持ちなんてわかりたくもない。イジメは最低な行為だよ。どんな理由があろうとも、イジメをしていい理由にはならない」

普段はいつもニコニコしていて穏やかな祐ちゃんの顔がみるみるうちに赤く染まっていく。

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