イジメ返し―連鎖する復讐―
あたしのことを必要としてくれている人は……誰もいないの?

ううん、違う。

いると勝手に思っていただけ。

あたしは家族からずっと疎ましい存在だと思われていたんだ。

「どう?ノエルのことを必要としてくれている人はいた?」

「うるさい……」

「え?なに?声が小さくて聞こえないんだけど」

「うるさいって言ってんだよ!!」

あたしの前で偉そうに両腕を組んで仁王立ちする咲綾を怒鳴りつける。

「アンタの言う通りあたしのことを必要としてくれる人はいなかったかもしれない
。でも、別にそれでもいい。これから探していけばいい」

「残念だけど、それはもう出来ないよ」

そう言うと咲綾は一度部屋を出て両手に大きなゴミ袋を抱えて戻ってきた。

途端、部屋の中がなにかが腐敗したような匂いでいっぱいになる。

「……くさっ……。なんなのよ……」

「夏だし、やっぱり臭いね。でも、大丈夫。しばらくすれば鼻が慣れるみたいだからさ」

咲綾はそう言うと袋を持ち上げてあたしの頭の上からゴミを降りかけた。

「うっ……やめっ……!!」

物凄い悪臭に吐き気がこみ上げてきた。

「どういうつもり!?」

ゴミ袋の中身はどこかの家庭で出た生ごみのようだった。

「知ってる?餓死って一番しんどい死に方なんだってさ。ノエルには最善の死に方だと思わない?」

「……は?」

「この部屋を閉め切ったら防音で叫び声は外部には絶対に漏れない。ノエルは家出したとみなされ警察は探そうとはしない」

「そんなはず……あたしがいなくなれば家族が……」

そこまで言って言葉を切る。

そうだ。あたしがいなくなることが家族全員の希望……。

必死に探すはずがない。

中学の友達とは疎遠で連絡もとっていないし、バスケ部の瑠偉も海荷ももういない。

祐ちゃんだってそう。

イジメが明るみになりあたしが逃げたと考え、探そうとなどは思わないだろう。

「そんな……」

身震いする。

「これも全部アンタたちの計画!?イジメ返し!?」

そう叫ぶとずっと黙っていたエマがあたしに近付いてきた。
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