イジメ返し―連鎖する復讐―
「咲綾!!お願い!!こんなところに置いていかないで!!今までのことは謝るから!!本当にごめん!」

「うん、ここでよく反省してね」

「――待って!!ねぇってば!!どうしたら許してくれるの!?」

声の限り叫ぶと、部屋を出て行く寸前で咲綾が振り返った。

「あたしもやめてって何度もノエルにお願いしたよね?聞いてくれなかったのはノエルでしょ?」

「ごめん、本当にごめん……」

虫が足元から這い上がってきて全身に鳥肌が立つ。

「あの時は色々あって……どうかしてたの。だからーー」

「そんなのあたしには関係ないよ。イジメ返ししなかったら、あたしはきっと今のノエルみたいに泣いてた。ううん、むしろ……この世にいなかったかも」

咲綾の顔は清々しいほどに晴れやかだった。

「エマには本当に感謝してる。ようやく終わった。これであたしは幸せになれる」

咲綾はにこりと笑ったあと、言った。

「バイバイ、ノエル。地獄で瑠偉と会えるといいね」

「待って!!待てよ!!咲綾!!!ふざけんな!!」

咲綾が出て行くと室内に静寂が訪れた。

「嘘、でしょ……?こんなのありえない……」

蒸し暑い室内で羽音が耳元で不快な音を鳴らす。
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