イジメ返し―連鎖する復讐―
『あたし、この間の部活のあと家に帰って脱水症状になって意識もうろうとして倒れて帰ってきた家族に発見されたんです』

「そ、それが……?」

『両親に理由を話すとにかく怒ってしまって。今日、内容証明が届くと思いますのでよろしくお願いしますね』

「な、なにそれ……」

胃が痙攣したかのような不快感に声が上ずる。

『うちの父、弁護士なんです。民事裁判となれば、損害賠償請求……つまり慰謝料を請求することになります。法廷でとことん戦いましょうか?ねぇ、咲綾先輩?』

唇が震える。民事裁判……?損害賠償請求……?

なにそれ。どうして……どうしてこんなことに……。

「証拠もないくせによくもそんなことを……」

『ありますよ。先輩があたしにした仕打ち、他の部員が証言してくれるって約束してくれました』

「そんなの証拠になんてならないでしょ?」

『先輩があたしをしごいたあの日、ポケットにボイスレコーダーを忍ばせておいたんです。聞きます?』

喉の奥から変な音が漏れた。

あたしはあの日、忍になんて言ったんだろう。思い出そうとしても混乱した頭では思い出せない。

『では、あたしはこれで。人を傷付けたら罰が下るんです。全部、咲綾先輩の行いのせい……因果応報ですよ』

その言葉を最後に忍は一方的に電話を切った。

まさか……こんなこと……。

それに因果応報って……まさか……。

「全部……エマの仕業……?アンタ……あたしを裏切ったの?」

唇が震える。

「裏切るもなにも咲綾先輩のイジメ返しは終わりましたよね?」

「だから今度は忍のイジメ返しに協力したってわけ!?」

「だったらなんですか?」

詰め寄って怒鳴りつけると、エマはトンっとあたしの肩を手のひらで押した。

真っ黒な冷めた瞳であたしを見つめるエマの表情に思わず身震いがする。

「エマが救いたいのはイジメの被害者です。加害者じゃない」

「ち、違う……!あたしは忍をイジメてなんていない!!」

冷めた目があたしに向けられる。

「相手がイジメだと思った時点で、それはイジメです。エマは忍への咲綾先輩の言動をイジメだと客観的に判断しました」

「そんな……!!」

顔が引きつる。一体どうしたらいいの。

どうしたら……――。
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