イジメ返し―連鎖する復讐―

練習中もことあるごとにあたしは３年に目の敵にされた。

「アンタ、もうへばってんの？」

試合形式の練習で隣に並んだとき、海荷がそう尋ねた。

「さっきの筋トレのせいかも……」

「自業自得だね。マジ、ざまぁ～」

信じられない。

海荷の言葉に呆然としていると、ピーっという笛の音とともに試合が始まった。

必死になってディフェンスしていると、「くっついてくんなよ、キモいな」
と海荷に罵られる。

周りに敵はおらず明らかなノーマーク。

攻めることに決めてシュートを打つと、ボールがゴールネットを揺らす。

「よしっ！！」

チームメイトにハイタッチを求めようと手を挙げても、誰もそれに応えてくれない。

それどころか、「なんでアンタが打つのよ。勝手なことしないでくんない？」とノエルが睨んであたしのバッシュを踏みつけた。

「いたっ……」

「無理無理。視界にいれるだけでも、なんかイライラしてくる。忍ー！こいつとチェンジ！！」

「え！？どうして……」

忍があたしと同じ色のビブスを着てコートに入ってくる。

いやだ。まだ試合を続けたい。

「先生、あたし……――」

コートの隅にいた折原先生に助けを求めると、先生は手でコートから出るようにジェスチャーした。

「出ろ、深山。お前、さっきから全然足が動いてない。忍と交代だ」

「そんな……！！」

すると、あたしの隣に瑠偉がやってきた。

「咲綾」

瑠偉のやわらかい声。

誰に対しても優しい瑠偉ならあたしのことをかばってくれるかもしれない。

「瑠偉、あのさ……」

すがるように瑠偉の名前を呼ぶと、彼女はそっとあたしの耳に唇を寄せた。

「――馴れ馴れしく先生に助けを求めないで。アンタは先生の特別なんかじゃないんだから」

「……え」

低く押し殺した冷たい声。

動けないでいるあたしの背中を瑠偉はトンっと押した。

「はい、交代！！咲綾疲れてるみたいだし、少し休みなぁ？」

ふにゃっと優しい笑顔を浮かべた後、瑠偉があたしから離れていく。

さっきの……なに？

先生になれなれしくした覚えなんてない。

瑠偉の言葉に全身に鳥肌が立った。