イジメ返し―連鎖する復讐―
エマはタクシーで家まで送り届けてくれた。

正直、助かった。歩いて帰るのはしんどかったから。

それにしても高校生が学校にタクシーを呼ぶなんて聞いたことがない。

エマがお金持ちだという噂は聞いたことがあるけれど、私の想像以上に裕福な家庭で育ったのかもしれない。

家に帰ると食事もとらずにお風呂に入った。

全身から漂う吐しゃ物の匂いに気付かれないようにするためだ。

湯船につかると全身が痛み地獄のようだった。

瑠偉たちからの暴力はほとんど体だったし、母にはバレずに済んだようだ。

食欲がないと告げて自室に入り、ベッドの中で横になる。

眠ることなんてできない。

目をつぶると、体育館倉庫でされたことが鮮明に蘇り全身が震えた。

「やめて、やめて、やめて、やめて……」

ボソボソと呟きながら指の皮を無心になって向き続ける。

その間だけは、嫌なことを忘れることができた。
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