イジメ返し―連鎖する復讐―

キッチンに立ちお茶を入れている母の背中を見つめる。

言うなら今だ。

『部活、辞めたいんだ』

そう言えば母はあたしの気持ちを尊重してくれるに違いない。

いつだって母はあたしの味方だ。

ハァと息を吐きだしてそのときを待つ。

「お待たせ」

母がリビングのローテーブルにお茶を置く。

ごくりと唾を飲みこんだ。

言おう。辞めるって。部活を辞めたいって言う。

息を吸い込んだ時、「そうそう!ちょっと待ってて」と言うと母は立ち上がり廊下に消えていく。

「ハァ……」

タイミングを逸してしまった。

小さなため息をつきながらからからに乾いた口にお茶を流し込む。

「ふふっ、喜んでくれるといいんだけど」

再びリビングにやってきた母は背中に何かを隠したままあたしの前までやってくると、もったいぶったように微笑んだ。
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