イジメ返し―連鎖する復讐―
「ありがとう……。大事にするね」

「今から履き慣らせば引退試合にはしっくりくるかもしれないわね」

「そうだね」

部活を辞めたい。そんなことを言える雰囲気ではなくなってしまった。

予想外の母からのサプライズプレゼントに心から喜ぶことができない。

数か月前のあたしだったら、きっと大喜びしていたに違いない。

このバッシュを履いて今すぐにでも練習したいと思っていたはずだ。

それなのに……。

「このバッシュを履いてさらに活躍できるといいわね」

母の言葉に違和感を覚える。

「さらにって……なに？」

「今日ね、咲綾を学校に迎えに言ったときバスケ部の子に会ったのよ。小柄で可愛らしい女の子。えっと……何て名前だったかしら」

その特徴に思いつく人物はひとりしかいない。

「……まさか、瑠偉？」

「あぁ、そうそう！！瑠偉ちゃん。何度か試合見に行っていたからお母さんのこと知っていてくれたのよ」

「瑠偉……何て言ってたの？」

胸の奥に広がるモヤモヤ。聞きたくないのに、聞かなくてはいけないような衝動に駆られる。

「咲綾ってばいつの間にかレギュラーになっていたのね！お母さん全然知らなかったわ。瑠偉ちゃんが言ってたのよ。引退試合も出場するからぜひ応援に来てあげてくださいって」

「なにそれ……」

瑠偉が復帰してからはあたしはベンチにすらいれてもらえていない。

そんなあたしがこれからレギュラーになれる可能性なんて０だ。

それなのに、応援？

瑠偉……ひどすぎる。

うちの親まで巻き込んであたしを更に追い詰めようとしているの？

どうしてそこまでする必要があるの……？
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