イジメ返し―連鎖する復讐―
「中学から頑張っていたもんね!よかったね、咲綾」

母と話すのはもう限界だった。

喉元まで出かかった『イジメられてる』という言葉をぐっと飲み下す。

「なんかまた具合悪くなってきたみたい。少し休むね……」

バッシュを手に立ち上がると母は穏やかに言った。

「うん。ゆっくり休んで。」

「……」

無言のままリビングを出ようとしたとき、母があたしの背中に向かっていった。

「引退試合、楽しみにしてるからね!!お父さんも休み取るって言ってたから、二人で応援に行くから」

その場で立ち止まる。

でも、振り返ることはできなかった。

自然と目から涙が溢れて頬を濡らした。

もう無理だ。もういやだ。もう限界だ。

あたしはその場で言葉なく頷くと、階段を駆け上がった。

目の前が涙でぐにゃりと歪む。

両親は部活を頑張るあたしをいつも応援してくれていた。

中学時代から車での送迎も、差し入れも、どの親よりも熱心だった。

全てはあたしの為。あたしの為に……。

「今さら……辞めたいなんて言えないよ……」

自分の部屋に飛び込むと、あたしはその場に座り込み膝を抱えた。
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