イジメ返し―連鎖する復讐―
そして、引退試合を残り3か月に控えたときレギュラーで部内のエースの早乙女瑠偉が部活に来なくなった。
彼女が来なくなってから2か月。
瑠偉と仲の良いノエルが誘っても「少し休みたい」と話し、部活に顔をだすことはなくなった。
学校ですれ違うと特に変わった様子はないし、具合が悪い様子もなさそうだったから不思議だ。
でも、瑠偉が来ないことで部内の士気は明らかに下がった。
彼女は小学校からミニバスに入り、自他ともに認める部内のエースだったからだ。
だけど、瑠偉が部活に来なくなったことであたしは喉から手が出るほど欲しかったレギュラーの座を射止めた。
瑠偉が引退試合までに部に戻ってこなければレギュラーの座はずっとあたしのもの……?
いや、他力本願じゃダメだ。
あたしはずっしりと重たいエナメルバッグを左肩にかけ直し、バスケットゴールのある公園に向かった。
朝から15時まで行った練習試合で体は悲鳴を上げていた。
それでも家に帰るという選択肢はなかった。
みんなが休んでいる間、練習する。もっともっと練習してうまくなって、自分の力でレギュラーを勝ち取るんだ。
「よしっ、やろう……!」
陽が落ちてもこの公園だけは照明がついていてバスケの練習ができる。
一分一秒無駄にはできない。
瑠偉が戻って来ても「咲綾を使う」って先生に言ってもらえるぐらい頑張らなくちゃ。