イジメ返し―連鎖する復讐―
そっとあたしの手を取るエマ。

「この指、皮を剥がしてしまったんですね？」

「……っ」

慌てて背中に両手を隠す。

「それは自傷行為のひとつです。極度のストレスや不安によって引き起こされてる。その原因を作ったのは誰ですか？バスケ部のノエル先輩や瑠偉先輩……それに折原先生じゃないんですか？」

「どうしてそれを……」

「イジメっ子に好き勝手させていていいんですか？」

エマはわずかに首を傾げてあたしの言葉を待つ。

「あたしだって……本当はこんなの嫌だよ。バスケだってやりたい……。雑用ばっかり押しつけられて……悔しい」

「そうですよね」

感情が高ぶる。

エマはそっとあたしの隣に寄り添い、震える背中を手のひらで優しくさすってくれた。

「悪口言われたり、無視されたり、仲間外れにされたり……。この間なんて体育館倉庫であんな暴力まで……。それに……瑠偉はクラスのみんなの前で嘘までついた……」

「瑠偉先輩が？」

「体育館倉庫の中であたしが吐いた物をそのままにしてその片付けを瑠偉にやらせたってクラスの男子たちに責められたの」

「それはおかしいですね。あの日、エマと咲綾先輩が片づけたはずなのに」

「でも、クラスのみんなは瑠偉の言葉を信じてた。それであたし……気分が悪くなって教室でおう吐しちゃって……」

思い出して顔を両手で塞ぐ。

こんな恥ずかしいことをエマに話してあたしはどうかしてしまったんだろうか。

ほんの少しだけ残っていたはずの自尊心すら捨ててしまうぐらいボロボロになってしまったんだろうか。

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