イジメ返し―連鎖する復讐―
「やっぱりなかった……」

校舎の中を必死になって探してもバッシュは見つからない。

昼食を食べていないせいか眩暈がして倒れそうになる。

校舎から出た頃にはもう外は真っ暗だ。

部活をやっていた生徒たちもとっくに帰ってしまっただろう。

最後にもう一度だけ体育館を探そうと考えて入口の方へ向かって歩く。

そのとき、体育館の方から男女の声が耳に届いた。

恐る恐る近付いていく。

その声に聞き覚えがあった。

ドクンドクンッと心臓が鳴る。あたしは足音を立てないように慎重に歩き体育館の入り口から中を覗き込んだ。

そこにいる人物に気づいて息をのむ。

「センセと一緒に部活できるのもあと一か月だねぇ。瑠偉、寂しいなぁ~」

中には瑠偉と折原先生がいた。

至近距離で向かいあってしゃべっている二人。

瑠偉が先生の手に自分の指をそっと絡めた。

「俺だって寂しいよ。でも、俺は瑠偉が部員じゃないほうがいいな」

「どうしてぇ?」

「どうしたって瑠偉のことばっかり目で追っちゃうんだよ。可愛くて」

「もー、センセってばぁ~」

「それに生徒と教師っていうしがらみがなくなったほうが堂々と付き合えるしな」

「ふふっ。そうだね」

唇が震える。

なにこれ。どういうこと……?

堂々と付き合える?

二人の親密そうな様子がすべてを物語っていた。

先生と瑠偉は深い関係にあったんだ。

そう考えれば、瑠偉が先生に対してのあたしの言動に怒りを感じる気持ちも理解できる。

そうか。それで……。
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