🩸狂い切ったヴァンパイア🩸

吸血

そ、そんなの、聞いたことないっ……」

 わからない……だけれど、ここにいる人たちはみんな八重歯が長くて、耳が尖っている。

「ふふっ、聞いたことなくて当たり前だよ。ここは、吸血鬼と、その婚約者しか知らない、知っちゃいけない世界だからね」

「異世界っ……」

 どんどん頭の中でこんがらがって言って、ここは地球ですらないのかと思ってしまう。

「うーん。まぁ、そうかな」

「ううっ……もうわかんない……」

 周りの視線もチクチク痛くて、もう泣きそうになる。

「帰りたいっ……っぅっ……ひっく……」

「ちょっ……ごめんね、ひゆ。でも、ちょっと我慢して」

 玲くんがそう言って、数十秒が経つと、また黒い高級そうな車がこちらにきた。

「乗るよ」

 玲くんは私をお姫様抱っこしたまま、車に乗り込んで、その状態で私の頬をつついて楽しんでいる。

「やだっ……!!ぷにぷにしないでっ……!!」

 そう言って玲くんのことを睨みつけるけど、逆効果だったらしく、にやにやとこちらを見つめてくる。

「ふふっ、それで睨んでるつもりなんて、かわいいね」

「可愛いとか、そういうのを求めてるんじゃない!!」

そう言って頬を膨らませてまた玲くんを睨むが、効果なんてゼロだ。

その上、「なにその顔可愛い❤︎」と言ってパシャパシャとスマホで盗撮してくるし。

「や、やめて!!」

「嫌だね」

「や、やだっ……!!」

今度はバタバタしてみるけれど、びくともしない。

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