🩸狂い切ったヴァンパイア🩸
ジーンと胸が痛くなって、涙が流れる。
なんで、痛いの……。
わかんなくて、怖くて、玲くんを思い切り押して、部屋のドアを開けた。
すると、目の前には玄関がある。
どうやらこの部屋にはドアが二つついていて、片方が玄関につながっているらしい。
大きくて少し重い玄関のドアを開ける。
エレベーターに乗って、1番下の階に行く。
ここがどこなのかわからないけれど、とりあえず歩こう。
マンションを出て、そう思いしばらく歩く。
でも、ここがどこなのか全くわからない。
もう泣き出しそうになっていると、
「ひゆちゃん!!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「っ……!!蒼葉、くんっ……!!!」
なんだかとっても安心して、涙がポロポロと溢れてきた。
「っ、な、泣かないで」
そう言って優しく私のことを抱きしめてくれた蒼葉くん。
「ううっ……ありが、とうっ……」
「……迷子になっちゃったの?」
「うんっ……」
蒼葉くんの、優しい、声っ……。
「そっか……じゃあ、一緒に帰ろう?」
「い、いの……?」
「うん!」
嬉しそうに明るくそう言ってくれた蒼葉くんに、ますます涙が溢れる。
「もう、大丈夫だって」
今度は優しく頭を撫でてくれた。
蒼葉くんは、なんだかお兄ちゃんみたいだなぁ……。
「その子から手を離せ」
「……えっ……?」
「わーお。狐さん……」
狐……?
訳がわからない状態に陥り、私は誰かに抱き上げられた。
「ほぅ……。おぬしが我が嫁の友か。」
「へっ………?」
だ、だれ……?
この人、頭に耳が生えてるっ……!?それに、なんだか昔っぽい和風の服っ……。
それを見て、人間じゃないことがわかった。
「あなた、誰っ……」
「すまぬが、少々待て」
「あっ……はい」
そう言って、耳が生えてる人はぴょんぴょんと高く飛び跳ねて、蒼葉くんから離れていった。
「ここまでくれば大丈夫だろう」
すると、私のことをそっと下ろす。
「あ、あのっ……」
「ああ、申し遅れた。我は西条龍神だ」
「あっ……わ、私は、」
「咲坂ひゆだろう?」
まさかの言葉に驚きが隠せない。
「ははっ、お前が稀血のなぁ……」
「え、えっ……?」
ま、まれ……?
「ちぃと吸ってみたいが嫁に叱られるからやめておくか」
「さ、さっきから、嫁って……?」
「ん?ああ。雪奈のことだ」
「っ、え?」
雪奈、ちゃんっ……?
「知らぬのか?我らは恋仲なのだぞ?」
「え、ええっ……!?雪奈ちゃん、結婚してたのっ……?」
「ははっ、絶対に結婚はするが、まだ婚約までだ。おぬしも玲と婚約しただろう?それと同じだ」
玲くんとの、婚約と、同じ……。
「そ、そうなんですね……あっ……」
玲くんの、こと、知ってるんだ……。
「玲くんの、お友達ですか?」
「ああ。我らは幼なじみだからな」
「あっ、幼なじみ……」
そう、なんだっ……。
そういえば、この人って、なんなんだろう?
吸血鬼と人狼は知っているけれど、この人はしっぽがもふもふしてて、大きさ的にも多分人狼ではない。
「あなたは、なんなんですかっ……?人狼じゃあ、ないですよね……」
「ああ。我は妖狐だ」
よう、こっ……。
「そ、そうなんですね」
だから、狐って、蒼葉くん言ってたんだ……。