🩸狂い切ったヴァンパイア🩸
秘密の夢
……しばらくして、玲くんもお風呂に入り就寝体制に入る。
慣れないお部屋はちょっぴり怖い。
「はい、ひゆのお気に入りの枕だよ❤︎」
そう言った玲くんは小さい頃から一緒に寝ているうさぎの抱き枕を渡してくれた。
「あい……がと……」
「ふふふ、可愛い。もう疲れちゃったね。おやすみ」
そう言った玲くんは私の額にちゅっとして……ベッドに寝転がった……。
「おふぁ……しゅみぃ……」
*
『お前女の子みたいな顔してんじゃんキッモー!』
『あはははは!本当だ!!』
『っぅっ……ひっく……』
(……この泣いてる子は……?幼い頃の、玲くん……?)
『うゎ、泣きやがったー!逃げろー!!』
涙を流した玲に対して逃げるいじめっ子たち。
その後玲は立ち上がり、家出をしようと人間の世界へきた。
『うっ……お腹、空いた……』
血液が足りてない玲は座り込む。
『……?だいじょうぶ?』
そこへ、幼いひゆがきて、玲の頭を撫でた。
『お腹、空いたの……』
『吸血鬼、しゃん……?』
『うん……』
ぐったりしてる玲が心配すぎてひゆは首筋を玲の顔に近づけた。
『す、吸っていいよ……?』
(この子は、美味しそうで、優しい雰囲気がする)
玲はそう思いながらありがたく血をもらった。
『んっ……おいひい……』
『ふふふ、よかった』
ひゆは嬉しそうに優しく微笑む。
『あっ……お名前は?』
『さきざかひゆ!』
『可愛い名前だね、僕は柊玲。よろしく』
そう言ったふたりはまだ小さな手で握手をし
た。
『……じゃあ、れーくんってよぶ!』
『ふふっ、じゃあ僕はひーちゃんって呼ぶね』
『うんっ!よろしく〜!これで、お友達だぁ!』
そう言ったひゆが玲に抱きつくと、玲の心の中で胸騒ぎがした。
(なに、これ……胸、熱い……)
ドクッドクッと玲の鼓動が早まっていることなど知らずにひゆは頬を擦り寄せたりもしている。
「れーくんっ!ずーっと、お友達!」
そう言いながらにっこりと、可愛い綺麗な花が咲き誇ったような笑みを浮かべたひゆに玲は落とされた。
(……やばい……好き……)
色々な大人の人との交流があった玲は、人の考えていることがなんとなくわかった。
そのため、ひゆの心の綺麗さに玲は惚れてしまった。
そしてひゆも、生まれつき、人や動物の感情がなんとなくわかる体質をしていたため、お互いの心に無自覚で寄り添えていた。
『僕、ひーちゃんのこと、お嫁にしたい……』
『ふふふ、私も、玲くんみたいな人が旦那さんだったら幸せだなぁ』
『本当?……』
『うん、本当だよ!』
……この時だった。
“玲の愛が、重すぎ”になったのは。
『じゃあ、絶対お嫁さんにする』
『うん!」
———
—————
『ありがとう、ひーちゃん。絶対僕、迎えに来るからね——』
*
「んっ……」
もう、朝かぁ。
なんだか懐かしい夢を見たな。
大きな窓から日差しが差し込む中、とっても大きなベッドから1人身体を起こす。
「うっ……痛ててっ……」
なぜか痛い太もも。
そして、玲くんがいない。
「玲、くん……?」
名前を呼んでも返事がない。
どこに、行っちゃったんだろう……?
ベッドから降りて、広い部屋の中で玲くんのことを探す。
「玲くんー!!」
大きな声を出して名前を呼んでも返事がない。
悲しく不安な気持ちになっていると、
ジュージューとなにかを焼く音がしてきた。
おまけにとってもいい匂いもする。
匂いをたどって行くと、
「あ、ひゆ!おはよ」
にこにこと微笑みながら、大きく広いキッチンで料理をしている玲くんの姿が見えた。
「ううっ……よかった……」
嫌われて、逃げられちゃってたら、どうしようかと思った……。
「……ふふふ❤︎嫌って逃げたりなんてなにがあっても絶対にないから、安心してね」
「へ!?」
玲くんは私の思考を読んだかのようにそう語る。
「ひゆが考えてることは、なんとなくわかるよ」
「ううっ……恥ずかしい……」
「恥ずかしいことなんてこれっぽっちもないよ?僕にどんどん溺れていってくれて、本当に嬉しい」
玲くんは本気の声色でそう言ってくれて、私はとっても安心してしまう。
「私もっ……玲くんが、私のことしか考えられないくらい、私に依存してくれたら、嬉しいなっ……なんちゃって……」
ついそんな本心を言うと、玲くんは泣き出しそうになった。
「ええっ!?泣かせるつもりはっ!ご、ごめんね!!」
「ちがう、嬉しいの……そんなに、僕のこと考えてくれてるっていうか、自分に依存して欲しいって思ってくれて」
「え、えへへっ……それなら、よかった……」
嫌がられなくて、よかったぁっ……。
安心して胸を撫で下ろす。