魔王に見初められて…
「まさか、殺……」
「フフ…内緒…」
「お願い!そんなことやめて!
ほんとに私達何も━━━━━
うぐっ……う…」
話の途中で、克樹に親指を口の中にグッと突っ込まれた結愛。

「私達って何だよ……!?
誰と誰のこと?」
「え……」
「まさか、結愛とさっきの奴?
ダメだよ…?結愛と一緒が許されるのは、俺だけ!
いい?
わかった?」
結愛は何度も首を縦に振った。

この日から、結愛は克樹にたいして恐怖心を抱くようになった。
克樹のことは、愛している。
でも、怖くて顔色ばかり伺うようになってしまったのだ。

「結愛」
「は、はい!」
「俺が怖い?」
「え……」
「震えてる…」
結愛が最近びくびくしているのは、当然克樹も気付いている。
ある夜…ベットの上で、向かい合って座り足の間に結愛を挟んで優しく語りかけた。
今の克樹は、いつもの優しい克樹だ。

自然と涙が出てきた、結愛。
「ごめんなさい…」
「なんで、謝るの?」
克樹が涙を拭ってくれる。
「克樹が怖い……」
「うん」
「でも…好きなの……」
「うん」
「わからなくなってきてるの。
怖くて離れられないのか、好きだから離れられないのか」
ゆっくり克樹に、本音を語る結愛。
克樹はただ、聞いていた。

「俺は、結愛を愛してるよ。
こんな気持ち初めてで、どうしていいかわからないくらいに……」
「………」
「自分でも怖いんだ……好きすぎて抑えられない…」
「私も…好きだよ。
もっと信じてほしい……ほんとに仕事でしか男性とは関わってないから」
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