魔王に見初められて…
「結愛、知ってたのかよ…」
「ううん。でも最近、凄く怖い時があるの……
言葉で上手く言えないけど、ただ怖いだけじゃない何かがあるってゆうか……」

「逃げよう、結愛」

拓史がガシッと結愛の手を掴み言った。
「でも…なんとなくだけど、後が怖い気がする。
それに、拓史くんにも迷惑かけられない……!」
「俺は…今まで結愛のこと凄く傷つけてきたから、守りたいんだ。
だから、迷惑なんて考えるなよ!
大丈夫……結愛は守るから」
そのまま、引っ張られるように拓史についていく、結愛。
どうしても振り払えなかった。
克樹のことが好きなのは、間違いない。
でも、恐ろしさの方が勝ってしまい、振りほどけなかったのだ。

でも━━━━━
屋城組を甘く見ていた。
いや、屋城 克樹を甘く見ていた。

拓史の家に一度行き、拓史が簡単に荷物をまとめている。
「俺の友達のとこに少しの間、居候させてもらおう。
その後のことは、その時考えよう……」
「拓史くん……やっぱり私、帰るよ。
そんなことしたら、拓史くんやその友達にも迷惑かかるでしょ?」
「だから!それは━━━━━━」

ピンポーン!
「え…?」
「俺が出る。結愛は隠れてて…!」

「はい」
「私、岸本と申します。
結愛様をお迎えに参りました」
「は?いませんけど?俺、急いでいるので帰ってください」

結愛は、物陰からそれを見ていた。

岸本の真っ直ぐな視線。
表情は柔らかいのに、とても冷たく恐ろしい雰囲気。

ブルッと寒気がする。



「では、克樹様からの伝言をお伝えしておきます。
“結愛、今すぐ出てきてくれたら、その男を傷つけない。ただ…待てるのは10分だけ。
10分後、地獄を見ることになるよ”
とのことです。
では、失礼いたしました」

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