幽霊でも君を愛する
彼はボールペンの先端をひたすらにカチカチと押し続けたり、指の間を高速で潜らせている。
ちなみに私はペン回しができない、中学生の時に試そうとしたけど、何度も落としすぎてファンから貰ったインク入りの万年筆を壊して、そのまま床にインクをぶちまけた。

チャイムが鳴ってしばらく、私達はかなり待ち続けていたけど、一向に講師が現れない。ここまでくると殆どの生徒がイライラを募らせ、教室内はちょっとピリピリした空気に包まれていた。
窓の向こうから聞こえる風の音も、何故か強くなった気がする。ビュンビュンと窓に打ち付ける風が、教室全体をガタガタと震わせていた。
いつの間にか私の手には、読みかけの小説が握られていた。あまりにも暇だったから、ついリュックから取り出してしまった。
ちょくちょく降りてくる前髪をかき上げながら、栞を無意識に爪で押し込む。

ピン ポン パン ポーン

「全校生徒の皆さん、本日の講義は全て中止とします。
 繰り返します、本日の講義は全て・・・」

教室にいる全員の思考が止まる。その時だけは、壁に掛けてある時計の秒針ですら止まっていた。そして次に発した言葉は、ほぼ『歓喜』と『不満』だ。
「今から何処行くー?」と、早速予定を立てる生徒の後ろでは、「電車賃無駄になった!!」と不満を垂れる生徒。そして次々と、生徒が教室から出て行く。
だが不満を垂れる人は、教室から一向に出て行こうとしない。何故なら今の放送が受け入れられない節があるからだ。俺の隣でブーブー言っている友人だって同じだ。
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