幽霊でも君を愛する
第九章 不穏な訪れ
夜の公園は、異様な空気に包まれている。耳が痛いくらいの静寂が周囲を包み込み、遊具だけがその場にひっそりと佇んでいる。
太陽が登っている時間帯、その公園に人がいない日なんて無い。
朝にはウォーキングをする奥様方の休憩場所として栄え、昼間は辿々しく歩く幼児と母親で栄え、夕方頃には学校が終わった子供達で栄える。
公園に人がいなくなる時間帯は、子供も親も寝静まった頃。時々酔っ払ったサラリーマンが公園を寝床にするが、今日はそんな人さえ見受けられない。
ブランコが風によってユラユラと揺れ、水道の蛇口からは、まるで秒針を刻む水時計のように、ポタポタと水滴が滴り落ちる。
公園の中心にある噴水は、夜になると止まってしまう。濁り切った水面は、まるで闇夜の如く底を遮る。学校帰りの子供達からは、「この公園の水に触れると呪われる」と言われる始末。
ただただ寂しい空気が流れる公園で、度々聞こえる時計の秒針、そして金属が擦り合う悲鳴にも似た微かな鳴き声。
周りにある住宅街からも光が途絶え、闇夜に迷い込んだ木々は、まるで黒く巨大な化け物にも見える。黒い電線すらも見えない、暗闇が支配する時間帯。
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