幽霊でも君を愛する

「やっと起きたな。」

ドアの隙間からこちらを覗く目。昨日三楼が散々自慢していた、『幽霊』兼『彼女』の牡丹さんだった。しかし彼女の姿は、昨晩とは違う。
何故かエプロンをつけて、雑巾を握りしめている。完全に掃除中の主婦みたいな格好だ。どうやら彼女が三楼の家を管理している話は、決して間違ってはいないみたいだ。
昨晩の話を聞いただけでは全然想像できなかったけど、その実態を見てしまったら、もう受け入れるしかない。
どうやら私は、リビングで眠っていたみたいだ。壁にかけてある時計を見ると、もう午前をとっくに通り過ぎている。

「・・・三楼さんは？」

「大学。」

「え？　彼って一体いくつなの？」

「19歳だ。ちなみに、『作家』兼『大学生』なの。」

びっくりした、昨晩の様子から、てっきり20歳は超えていると思っていたけど、まだ大人の一歩手前の段階だったなんて、予想を遥かに上回った。
しかも、牡丹さんは『大学生』に継ぎ足して、『作家』という言葉も口にした。・・・でも、何故か納得できてしまう。
幽霊相手に、あんな流暢ではっきりとした物言いができるなんて、それこそ『才能』の一種なのかもしれない。