幽霊でも君を愛する
牡丹さんは、ソファに座ってテレビのリモコンをつけた。今は丁度、お昼の報道番組が放送されている時間帯だ。・・・もちろん、『連続不審火』の件も、詳しく掘り下げられていた。
見たくはないけれど、こうして人の家でテレビを見るのも相当久しぶりだ。もう出演しているジャーナリストや著名人なんて、誰一人として分からない。
もう私には、いつ自分が幽霊になったのかも、いつ自分が生きている人間に手を下すようになったのかも、何もかも思い出せなかった。
私は急に怖くなり、そのままタオルケットの上で震えていた。そんな私を見た牡丹さんは、小さなため息をつく。
「頭はだいぶ冷えたみたいね。」
「・・・うん。冷えすぎて、寒いくらいなの。」
その言葉を聞いた牡丹さんは、すぐキッチンの方へと向かい、戸棚に入れてあるマグカップとココアの瓶を取り出した。そして器用に、ココアの粉をマグカップへと注ぐ。
ただ、私は牡丹さんの行動に戸惑いを隠せなかった。何故なら私は、今まで何度か現実世界の物体に触れようとしたけど、石すらも持つ事ができなかった。
地面に立つ事はできる、でも壁を通り抜ける事はできなかった。何故かは分からない、何度か自分自身で実験を試みたけど、できなくなった事があまりにも多すぎた。
物を持つ事もできなければ、飲食もできない。人に声をかけても反応はしない、相手に触れる事もできない。
だからこそ、昨晩出会った三楼さんは、とにかく『異常』だった。幽霊を相手に、あれほど冷静且つ、自然な態度を取れる人なんて、まさかこの世にいるとも考えていなかった。
「持ってみろ、今なら持てるかもしれない。」
そう言って、熱々のココアが入っているマグカップを差し出される。「『今なら』持てるかも」という言葉に疑問は感じたけど、牡丹さんの自信満々な表情に、私も思わず手が伸びてしまった。
「・・・・・あ・・・」
「持てるだろ?」
「・・・持てた・・・
何で?!!」
見たくはないけれど、こうして人の家でテレビを見るのも相当久しぶりだ。もう出演しているジャーナリストや著名人なんて、誰一人として分からない。
もう私には、いつ自分が幽霊になったのかも、いつ自分が生きている人間に手を下すようになったのかも、何もかも思い出せなかった。
私は急に怖くなり、そのままタオルケットの上で震えていた。そんな私を見た牡丹さんは、小さなため息をつく。
「頭はだいぶ冷えたみたいね。」
「・・・うん。冷えすぎて、寒いくらいなの。」
その言葉を聞いた牡丹さんは、すぐキッチンの方へと向かい、戸棚に入れてあるマグカップとココアの瓶を取り出した。そして器用に、ココアの粉をマグカップへと注ぐ。
ただ、私は牡丹さんの行動に戸惑いを隠せなかった。何故なら私は、今まで何度か現実世界の物体に触れようとしたけど、石すらも持つ事ができなかった。
地面に立つ事はできる、でも壁を通り抜ける事はできなかった。何故かは分からない、何度か自分自身で実験を試みたけど、できなくなった事があまりにも多すぎた。
物を持つ事もできなければ、飲食もできない。人に声をかけても反応はしない、相手に触れる事もできない。
だからこそ、昨晩出会った三楼さんは、とにかく『異常』だった。幽霊を相手に、あれほど冷静且つ、自然な態度を取れる人なんて、まさかこの世にいるとも考えていなかった。
「持ってみろ、今なら持てるかもしれない。」
そう言って、熱々のココアが入っているマグカップを差し出される。「『今なら』持てるかも」という言葉に疑問は感じたけど、牡丹さんの自信満々な表情に、私も思わず手が伸びてしまった。
「・・・・・あ・・・」
「持てるだろ?」
「・・・持てた・・・
何で?!!」