幽霊でも君を愛する
よく自己啓発本にも載っている言葉、「『不安』や『苛立ち』は、他者へ伝染する」
そう、それは『怨念』も例外ではなかった。例えば、満員電車に乗った社会人の大半は、

「行きたくない」とか
「何で俺がこんな窮屈な場所に押し込められているだ」とか
「俺はこんな平凡なリーマン人生なんて送りたくなかった、全ては社会が悪いんだ」とか

多くの人が、そうゆう黒い感情を心の中に抱え、その黒い感情は、やがて他者を巻き込む『怨念』へと姿を変える。
その怨念に触れてしまうと、何の関係も繋がりもない第三者が、同じ様な暗い思考に陥る。そして黒い感情は徐々に増幅して、その感情に耐えられなくなった人は、自暴自棄になってしまう。
私の目に見える『怨念』というのは、『黒いモヤ』でしかない。しかし、そのモヤの中に詰まっている『私情』や『鬱憤』は、とても見れたものではない。
無鉄砲な『怨念』が充満している電車内は、完全に真っ黒だ。それこそ、火事で膨れ上がる大きな黒煙とは比べものにならないくらいの濃さだ。
その上、見えている私にも『怨念』の影響がある。普通の視界を持つ人の場合、自分自身が苛立つのはただ『偶然』に思えても仕方ない。

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