幽霊でも君を愛する
「・・・でも、三楼さんはどうして私を・・・?」

「・・・実はさ、もう彼女から聞いているとは思うけど、私は地元ではちょっと有名な作家で
 ね。」

「ちょっとどころじゃない、この前テレビ局からの話が来たばかりだろ。」

牡丹が、空中を漂いながら私の頬を両手でつねる。その光景を見ていたユキちゃんは、苦笑いを浮かべていた。

「いででで・・・
 ・・・えーっと、どこまで話したっけ・・・

 ・・・あぁ、そうそう。それでねユキちゃん。実は、君みたいな霊と直接話をするのは、これ
 が初めてではないんだ。」

「・・・うん、だと思ったよ。」

ユキちゃん、徐々に私の事を把握している気がする。ちょっと複雑な気持ちだ、そんなに自分は分かりやすい性格なのだろうか・・・?

「それでね、君に声をかけたのは、『交渉』をする為だったんだ。」

「『交渉』って・・・何を??」

明らかにユキちゃんが構えた。まぁ、いつも通りの反応だ。
自分が分かりやすい人間なのかは定かではないけど、『ちょっとよく分からない人』・『怪しい人』と思われても仕方ない。
でも、相手が周りには見えていない存在だからまだマシだ。もしこれを、幼い子供に言い聞かせたら、速攻鉄の楔を結ばれる。

「君を成仏させてあげる条件として、君の生涯や、霊になってからの経緯を、私の綴る作品の一
 部に充てがう事を許可してほしい。 
 もちろん、君の事を悪く例える作品は作らない。君を一人の『登場人物』として充てがいた
 い。主人公になる場合もあれば、主人公をサポートする重要なキーマンにもなる場合もあ
 る。
 でも決して、『悪役』や『主人公を邪魔立てする存在』としては充てがわない。君がこの世界
 に居た証を、私が作品として残してあげる。
 だから、どんな言葉も私に投げかけほしい。霊となった当時の感情も、霊になって改めて感じ
 た事も、全部。」
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