狂ったのは?
 そこには人間の足があった。
 驚いて慌てて立ち上がり、その足を確認すると私が気に入った桜の木に寄りかかるように目を閉じている男の姿があった。
 上の桜ばかり見ていた私は、男の存在に気づかなかったようだ。
 私がつまづいたにもかかわらず、微動だにしない男をどうしようかと考えるが、とりあえず声をかけてみることにした。

「あの、大丈夫ですか?」
「……」

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