狂ったのは?
 私は目の前で喧しく何か喋る冬馬ではなく、あの桜の下で優しくハヤテさんの姿が目に浮かぶ。
 そうだ。こんな男よりハヤテさんの所へ行きたい。こいつとは別れたんだから、ハヤテさんに私の気持ちを伝えよう。もう、私を縛られるものは何もないのだから。
 私はまだ捲し立てる冬馬を無視して店を出ようとする。

「おい、俺の話を聞けよ‼︎」

 そんな私の腕を冬馬が掴む。苛立っているのかその握る手は強く、痛みが腕にはしる。
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