あの日のつづき
そのうち、河合君の好きなあの子には、他のクラスに好きな人がいるという情報を耳にした。
だからって、ラッキー…とかチャンスかも…とは思わなかった。
恋心って、そんなすぐには変えられない。
私みたいに。
だから、告白をするつもりもなかった。
ただ見てるだけでよかった。
そう思っていた私の気持ちに変化があったのは、二学期の終業式の一週間前だった。
何の前触れもきっかけもなく、私は思った。
_河合君に、好きって言いたい。
その気持ちは日に日に大きくなった。
_言いたい。
_言える気がする。
_言える。
_今言わなきゃ。
強くなる気持ちを抑えきれず、私は終業式が終わってすぐ河合君を追いかけた。
自転車置き場に、河合君の姿はあった。
初めての告白だった。
あんなに「言いたい」「言える」と思って臨んだのに、彼の前に飛び出した途端、足ががくがく震え始めた。
喉元が何かに塞がれたように声が出ない。
指先がしびれ始めて、感覚がなくなっていく。
「河合君のこと、ずっと前から、好きでした」
ようやく言えた告白は、そんなありきたりなものだった。
だけど、私にはそんなありきたりな言葉を言うのが精一杯だった。
そこに立っているのすら、やっとだった。
それなのに、ようやく言えたのに、次に私が口にしたのは、
「でも、付き合ってとか、そういうんじゃないから」
それが、16歳なりに考えた、告白のオチだった。