あの日のつづき
自分の気持ちを伝えられただけで満足でしょ?
好きな人がいるってわかってるのに、それ以上何か言ったり、何かを求めたら、相手を困らせるだけ。
好きだからこそ、そんなことしない。
好きだから、自分の気持ちだけ伝えて、さらりと去る。
当初の予定通り足早に去ろうとする私の頭上に、ふわりと声が落ちた。
「ありがとう」
間近で聞く、私だけに向けられたその声に、踏み出した足が止まりそうになった。
「うん」とだけ小さくうなずいて、私は足を止めなかった。
たぶん、これが、初めての会話だった。