【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
第1部
1話 はじまりは婚約破棄
「――マリアヴェーラ・ジステッドとの婚約を破棄する!」
貴族の令息と令嬢が通う学園の卒業パーティーで、第一王子のアルフレッドは高らかに宣言した。
壇上の彼には、ピンク色のドレスをまとった少女が不安げな表情で寄り添っている。二人の視線の先には、人が退いたホールに一人で立つマリアがいた。
「マリアヴェーラ。貴方は美しい。薔薇のような赤いドレスが似合う長身と、煌びやかな顔立ち、王子の婚約者として申し分ない聡明さ、全てにおいて完璧だった。学園中が『高嶺の花』と褒めそやすに相応しい貴族令嬢であることは間違いない。だが、貴方は私を癒してはくれなかった。私が心から求めるのは、ここにいるプリシラだったのだ」
アルフレッドが肩を抱き寄せると、プリシラは安心したように微笑んだ。
道端に咲く小花のようだと、マリアはかざした羽根扇のかげで思う。
「高貴な貴方とはちがうプリシラの控えめな態度に、私はじょじょに惹かれていった。プリシラと話したり庭園を散策したり、食事をともにするごとに、彼女とあたたかな家庭を築くことが私の夢になった。生まれつきの婚約者である貴方には悪いが、もはや他の女性との結婚は考えられない。反論もあるだろうが、どうかここは引いてほしい」
貴族の令息と令嬢が通う学園の卒業パーティーで、第一王子のアルフレッドは高らかに宣言した。
壇上の彼には、ピンク色のドレスをまとった少女が不安げな表情で寄り添っている。二人の視線の先には、人が退いたホールに一人で立つマリアがいた。
「マリアヴェーラ。貴方は美しい。薔薇のような赤いドレスが似合う長身と、煌びやかな顔立ち、王子の婚約者として申し分ない聡明さ、全てにおいて完璧だった。学園中が『高嶺の花』と褒めそやすに相応しい貴族令嬢であることは間違いない。だが、貴方は私を癒してはくれなかった。私が心から求めるのは、ここにいるプリシラだったのだ」
アルフレッドが肩を抱き寄せると、プリシラは安心したように微笑んだ。
道端に咲く小花のようだと、マリアはかざした羽根扇のかげで思う。
「高貴な貴方とはちがうプリシラの控えめな態度に、私はじょじょに惹かれていった。プリシラと話したり庭園を散策したり、食事をともにするごとに、彼女とあたたかな家庭を築くことが私の夢になった。生まれつきの婚約者である貴方には悪いが、もはや他の女性との結婚は考えられない。反論もあるだろうが、どうかここは引いてほしい」
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