【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 男性が使うには可愛らしすぎるレターセットなのは、マリアの趣味に合わせているからだ。
 マリアは、見た目こそ高嶺の花も同然だが、野花みたいにささやかで可愛らしいものが好きなのである。

「こんなに早く返事をいただけるなんて」

 うきうきしながら、書き物机のペーパーナイフを取り上げて封をあける。
 引き出した便箋にも、黄色い花が咲いていた。こぢんまりとした愛らしさに、マリアの口角は自然と上がる。

 書かれていた内容は単なる城での日常だ。
 めずらしく国王と食事をとったとか、側近とのポーカーで大勝ちしたとか、レイノルドに興味がなければ面白みがない話題ばかり。

 だが、マリアはどんなに些細な内容だって嬉しかった。
 レイノルドが、自分に伝えるために、わざわざ筆をとって書いてくれたのだから。

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