【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 体のラインがはっきり出るタイトなドレスを着こなし、鼻筋の通った横顔をさらして絵を見上げる女性は、まるで彼女こそがギャラリーのメインのようだ。
 とびきり美しく描いてもらった肖像画のなかのネリネを、背景にしてしまえるほどの美貌の持ち主は――。

「マリアヴェーラ・ジステッド……!」

 ネリネが震えながら名を呼ぶと、マリアは気づいて振り向いた。

「こんにちは、ネリネ様。まさか、こちらでお会いできるとは思っておりませんでした」

 姿勢を低くしてお辞儀するマリアに、ネリネは内心で毒づく。

 なぜ、よりにも寄って火事場の泥棒猫が、このギャラリーに。
 しかも令嬢たちが集まってお茶会を開く今日、ここにいるの。

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