【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
何名かの肩がビクッと震えた。恐らく、サロンで聞いたあだ名を、家に帰って使用人に話してしまった令嬢だ。
(口は禍のもとと言いますけれど、まさか本人が探り当てるとは思わなかったでしょうね)
彼女たちの不幸は、当のマリアが悪口に憔悴《しょうすい》するような気弱ではなく、売られた喧嘩は残さず買う主義だったことである。
「わたくし困っておりますのよ。だって貴方たちが広めた異名ときたら、〝稀代の悪女〟〝火事場の泥棒猫〟〝枯れぎわを知らない毒花〟……センスの欠片もない名前ばかり。どうせなら、もっと悪役めいた名前を考えていただきたいの。発案者はどなた?」
マリアがにこやかに追求すると、令嬢たちはネリネからそっと離れた。
まるで、この人がやりました、と指し示すように。
「な、なによ、あたしがやったっていうの? 悪口を考えたのはあたしでも、喜んで使ったのはあんたたちじゃない!」
(口は禍のもとと言いますけれど、まさか本人が探り当てるとは思わなかったでしょうね)
彼女たちの不幸は、当のマリアが悪口に憔悴《しょうすい》するような気弱ではなく、売られた喧嘩は残さず買う主義だったことである。
「わたくし困っておりますのよ。だって貴方たちが広めた異名ときたら、〝稀代の悪女〟〝火事場の泥棒猫〟〝枯れぎわを知らない毒花〟……センスの欠片もない名前ばかり。どうせなら、もっと悪役めいた名前を考えていただきたいの。発案者はどなた?」
マリアがにこやかに追求すると、令嬢たちはネリネからそっと離れた。
まるで、この人がやりました、と指し示すように。
「な、なによ、あたしがやったっていうの? 悪口を考えたのはあたしでも、喜んで使ったのはあんたたちじゃない!」