【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 マリアはそうやって自分を作ってきたし、他に自分らしい形を知らなかった。完璧に外面を作り上げれば上げるほど賞賛される。
 南国の大輪は、花壇で咲く雑多な小花にはなれないのだ。たとえ、可愛らしい見た目に憧れていたとしても、自分が持ちうる色と形で輝くしかない。

 マリアでは、どうあがいてもプリシラにはなれない。

「っ、アルフレッドさま……」
「お嬢様、大変でございます」

 涙をこらえていると、侍女のジルがツカツカと寝室に入ってきた。
 昔から側仕えとして働いている彼女は、昨晩のうちにマリアが婚約破棄を言い渡されたと聞いているはずだが、泣き腫らした顔を見てたじろいだ。

「お可哀想に……。氷を運ばせてお顔を冷やしましょう。その間に、私たちの手でお支度を調えますのでご安心を」
「お父様からお呼び立てでもありましたの」
「お客様でございます。マリアヴェーラ様に逢いたいと、第二王子のレイノルド殿下がお越しになりました」
「レイノルド様が?」

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