【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 名演技におののいた令嬢は、いっせいに「やったのはネリネ様ですわ!」「わたくしたちは被害者です」「悪口は聖女のご命令で広めました」と口にする。

 誰一人としてネリネの味方にはならない。
 この調子では、サロンが解散次第、聖女が第二王子の婚約者に怪我を負わせたと、声高に喧伝《けんでん》して歩くだろう。

 追い込まれたネリネは、怒りでプルプルと震える。

「あんたたち不敬よ! あたしが国王の後見を受けている聖女だと忘れたの!?」
「ご自分の立場をお忘れなのは、ネリネ様の方では」
「は?」

 あ然とするネリネに、マリアは憐れみの視線を向けた。

「少し未来が分かるだけのくせに、威張っても許されるなんて勘違いもはなはだしいですわ。お側にいる令嬢たちはみんな、お腹の底でネリネ様に不満を抱えておいでです。王家が守っているから手が出せないだけで、貴方自身を尊んでいるわけではありません。このままでは、いずれ誰にも相手にされなくなるでしょうね」

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