【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 ドレスは、ワンショルダーやマーメイドラインなど、豊満な体にそうように作られたデザインが多い。
 大輪の薔薇のコサージュ、ヒョウやトラの毛皮といった強気なアイテムも取りそろえられているが、それらはマリアの趣味ではない。

 ギラついた原色から目を反らして、衣装室の一角に進んで行く。
 部屋の隅を覆いかくすように張られたレースのカーテンを引くと、そこは、白やピンク、水色といった優しく、可愛らしい色合いであふれていた。

 マリアは、ぽうっと赤くなった頬に両手を添えて、身もだえる。

「ああ、もう! なんて愛らしいのかしら!」

 ここは、マリアの聖域だ。

 似合わないと分かっていながら注文してしまった小花柄の一着をはじめ、レースやリボン、虹色のボタンなど、ファンシーな装飾を多用した愛らしいドレスばかりが並ぶ。
< 128 / 446 >

この作品をシェア

pagetop