【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 マリアは飛び起きた。
 王子を待たせておくなんて公爵家の失態だ。一刻も早く馳せ参じて敬意を示すべきである。相手の格と面会する場面にあった装いも忘れてはならない。
 ボロボロの顔を厳しい表情で引き締めて、ジルとその後ろに整列する侍女たちに命じる。

「衣装室から、準礼装の青いドレスを持ってきてちょうだい。足下は外に誘われても履き替える必要がないように、あらかじめ革のヒール靴を。髪は学園に通っていたときと同じく下ろした状態で、小ぶりなサファイヤを使ったヘッドピースをつけますわ」
「かしこまりました」

 侍女たちはいっせいに持ち場に駆け出した。衣装室や宝飾室からお目当ての品を取りそろえて、コルセットを締め上げるあいだに、マリアは氷で目元を冷やす。
 
 ドレッサーに座って香油で髪を梳かされながら見る自分の顔は、予想していたよりも落ち着いていた。
 目蓋は腫れぼったいし赤みも残っているが、化粧でごまかせるレベルだ。赤みのうえに真珠の粉を叩くと、ワインで酔った貴婦人のごとき色香をただよわせた。

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