【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 王立薔薇園での一件から、二人は少しずつ友情を育んでいる。

 友人と遊ぶ暇もなく妃教育に励んできたマリアは、ミゼルから教わることも多かった。
 とくに、令嬢の間で流行っているものは彼女が情報源である。

「ミゼル様には前にも話しましたけれど、わたくし、肖像画を描いていただくことになりましたの。画家のレンドルムはご存じ?」

「もちろんですわ。令嬢たちの話では、タッチは平凡なのに不思議と描かれた人物が輝いて見える、新進気鋭の肖像画家だそうです。みんなこぞって依頼したがっていますが、レンドルム氏は偏屈で、素晴らしい家柄や容姿の女性しか描かないと公言しているのだとか……」

「変わり者なのは本当のようね。氏は、レンドルム辺境伯の五男坊という立場でありながら、肖像画家になるために領地を離れて王都にいらしたそうですもの」

 タスティリヤの貴族には限嗣相続制度が敷かれているので、五男というとほぼ爵位が継げない位置にある。
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