【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 当然、実家での権威はなかっただろうが、画家に転身は思い切ったものだ。

「ついに来週から描いてもらうのだけれど、どんな衣装にしようか迷っていて……。見栄えを優先するのであれば、大胆に肌をみせるドレスを身につけて、大ぶりの宝石で飾りつけた姿を描いてもらうべきだわ。けれど、せっかく流行の画家に描いてもらえるなら、可愛い装いをした自分を残したい気持ちもありますの」

 我がままを押し通せないのは、レンドルムに依頼したのが、マリアではなく父のジステッド公爵だからだ。

「この肖像画は、ジステッド公爵家に残していくものなの。いずれ、わたくしが王妃になった暁には、この家から嫁いだと公爵家の者たちが誇りに思うために」

 当然、求められているのは〝高値の花〟の姿である。
 似合わない砂糖菓子みたいな格好をしたマリアなんて、誰も見たくはないだろう。でも、それは本来のマリアではない。

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