【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 ぞっと背筋が寒くなった。

 アルフレッドへの恋慕が突如として打ち砕かれたように、今度はレイノルドまで奪われるのだろうか。
 憂鬱に取り憑かれそうになったマリアの視界に、キラリと反射する光が入った。

 光っているのは、スズランのブローチだった。
 お揃いのネクタイピンは、レイノルドの元にある。ペアルックなんて柄ではないのに、マリアが喜ぶから身に付けてくれている。

(レイノルド様は、彼なりにわたくしを想ってくださっているわ。それで十分よ)

 マリアは、クレロに掴まれていた手を、さっと引いた。

「ご馳走様でした。手が汚れたので洗って参りますわね」

 侍女の手を借りて立ち上がったマリアに、クレロは言い募る。

< 178 / 446 >

この作品をシェア

pagetop